定款の作り方|絶対的記載事項・電子定款・法務省の作成支援ツールと48時間認証【会社設立の流れ 第4回】
AIを活用して作成し、公式資料を参照しています。掲載の記入例は架空の例です。出典と確認日は本文に記載しています。
この記事の目次
定款は会社の根本規則で、株式会社では目的・商号・本店所在地・設立時の出資額・発起人の氏名と住所の5つを必ず記載し、公証人の認証を受けて初めて効力を持ちます。紙の定款には4万円の印紙税がかかりますが、電子定款なら不要です。法務省が関与する定款作成支援ツールを使えば、原則48時間以内に認証を受けられます。
この記事は連載「会社設立までの流れ」の第4回です。第3回で決めた8つの基本事項を定款の条文にする手順を扱います。
絶対的記載事項:書かないと定款自体が無効
| 記載事項(会社法27条) | 書き方の要点 |
|---|---|
| 1. 目的 | 行う事業を列挙し、末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」 |
| 2. 商号 | 「株式会社○○」または「○○株式会社」 |
| 3. 本店の所在地 | 最小行政区画(市区町村)まででよい |
| 4. 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 | 「金300万円」のように書く。資本金の額そのものではない点に注意 |
| 5. 発起人の氏名または名称および住所 | 印鑑証明書のとおりに記載 |
このほか、発行可能株式総数は設立登記までに定款で定める必要があります(会社法37条)。作成時に入れておくのが一般的です。
相対的記載事項と任意的記載事項
相対的記載事項は、定款に書かないと効力が生じない事項です。株式の譲渡制限、取締役の任期の伸長(非公開会社は最長10年)、株主総会の招集期間の短縮、現物出資などがこれにあたります。任意的記載事項は、定款に書かなくても他で決められる事項で、事業年度、取締役の人数、公告方法(定めがなければ官報)などです。少人数の会社では、次の事項を入れておくと後の登記や運営が楽になります。
- 株式の譲渡制限(全部の株式について、譲渡には会社の承認を要する旨)。非公開会社になり、役員任期の伸長や取締役会不設置の前提になる
- 取締役の任期を10年とする定め
- 取締役が1人の場合、その取締役が代表取締役となる旨
- 事業年度と公告方法
- 設立時取締役の氏名、設立時発行株式の数と払込金額、資本金の額(定款に書かない場合は発起人の同意書などが登記の添付書類になる)
電子定款にすると印紙税4万円がかからない
紙の定款は印紙税法上の課税文書(第6号文書)で、公証人が保存する原本に4万円の収入印紙を貼ります。電子定款(PDFに電子署名したもの)は課税文書にあたらず、印紙税がかかりません。日本公証人連合会も「電子定款は収入印紙不要」と案内しています。代わりに、電子定款の認証では電磁的記録の保存300円と、同一の情報の提供700円(書面交付は1枚につき20円加算)がかかります。
電子定款を自分で作るには、PDFに発起人全員が電子署名をします。利用できる電子証明書は、マイナンバーカードの公的個人認証サービス、商業登記電子証明書、民間の特定認証業務などです。2026年1月13日からは、PDFにXML署名を付与した電子定款や、複数の発起人が1通の委任状にXML署名する方式も使えるようになりました。電子署名の環境を用意するのが難しい場合は、行政書士に電子定款の作成と署名を依頼する方法があり、会計ソフト各社の設立支援サービスもこの形を取っています。
法務省の定款作成支援ツールと48時間認証
法務省が関与した「定款作成支援ツール」(2023年12月26日公開)を使って作成した定款は、公証役場で原則48時間以内に認証される取扱いが2025年3月3日から全国で行われています。ツールは、一人会社など小規模な株式会社を想定した定款のひな形に、決めた事項を入力していく方式です。自分で条文を書く自信がない場合は、まずこのツールで作り、必要なら専門家に確認してもらう順序が安全です。
さらに、認証後1週間以内にオンラインで設立登記を申請し、添付書面がすべてPDF、登録免許税を電子納付、補正がない、という要件を満たすと、認証から登記完了まで原則72時間以内に処理されます(2024年9月20日から)。
認証時に必要な「実質的支配者」の申告
2018年11月30日から、株式会社の定款認証を嘱託するときは、実質的支配者となるべき者(原則として議決権の50%超を保有する人。いなければ25%超、それもなければ代表取締役など)の氏名・住居・生年月日と、暴力団員等に該当しないことを公証人に申告します。一人会社なら発起人本人です。定款を作るときに、誰が該当するかを整理しておきます。
合同会社の定款は認証が不要
合同会社は、社員になろうとする人が定款を作成し、全員が署名または記名押印(電磁的記録の場合は電子署名)すれば成立します(会社法575条)。公証人の認証はいりません。絶対的記載事項は目的・商号・本店所在地・社員の氏名と住所・社員全員が有限責任社員であること・社員の出資の目的と価額(会社法576条)です。認証がない分、記載漏れをチェックする第三者がいないので、法務局の記載例と条文を照合してから登記申請します。
架空例:定款の骨子
第1条(商号) 当会社は、株式会社ミナト珈琲と称する。/第2条(目的) 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。1. 飲食店の経営 2. 食品の製造および販売 3. 前各号に附帯関連する一切の事業/第3条(本店の所在地) 当会社は、本店を神奈川県横浜市に置く。/第4条(公告方法) 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。/第5条(発行可能株式総数) 当会社の発行可能株式総数は、3,000株とする。/第6条(株式の譲渡制限) 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
bizlyai編集部による架空の記入例。実在事業者の実績・採択事例ではありません。
これは条文の形を示す説明用の抜粋で、これだけで定款は完成しません。設立に際して出資される財産の価額、発起人の氏名・住所、機関、役員の任期、事業年度、設立時取締役などを続けて定めます。法務省の支援ツールや法務局の記載例と照らし合わせ、内容が第3回で決めた事項と一致しているかを確認してください。
認証前のセルフチェック
- 商号・目的・本店・出資額・発起人の5つが漏れなく書かれている
- 発起人の氏名と住所が印鑑証明書の表記と一致している
- 発行可能株式総数が、設立時発行株式数以上になっている
- 取締役会を置かない旨(または置く旨)と、役員の任期が矛盾していない
- 実質的支配者となる人を特定できている
- 電子定款なら、発起人全員の電子署名の準備(マイナンバーカードなど)ができている
定款ができたら、次は第5回「定款認証」で公証役場の手続と手数料を確認します。
参照した公式資料
資料確認日:2026年9月18日。記入例・計算例は説明用に作成したものです。提出前に提出先の最新様式・案内と照合してください。
関連ガイド
- 会社設立までの流れ【連載の目次】
決めること、定款、認証、払込、登記、設立後の届出を順番に。
- 創業計画書の書き方(日本政策金融公庫)
設立と並行して準備する創業融資の書類。
- 創業計画書を作る前に準備するもの
資本金・必要資金・売上根拠を、設立前の検討から引き継ぎます。